自縛少年花子くんティックトック。 #地縛少年花子くん #R

花子くんつかさイラスト

自縛少年花子くんティックトック

遠くで俺を呼ぶ声が聞こえる。 この声は…土籠?ヤコ?少年?ヤシロ…?聞こえる声がグチャグチャに混ざっていって、もはや俺の名前を聞き取ることは出来なかった。 俺は今一体どんな状況なのだろうか。 皆が俺の名前を呼ぶってことは、緊急事態なのかな? 考えれば考えるほど溶けそうな脳ミソを使って現状を確認しようと、掠める視界を晴らすために手で目を擦ろうとしたら、俺の腕が拘束されていることに気が付いた。 両腕は後ろの木の棒に括りつけられていて、完全に使えない状態だ。 白状代も周りに見当たらない。 俺は今、本当に、どういう状況なのだろうか。 「あまねっ」 ふと横から聞こえた声に、俺の身体も思考も全て停止した。 横に振り返ってはいけない。 顔を見たら、もう二度と元に戻れない気がして。 皆の声がする方に集中する。 けれども、もう何も考えられないほど溶けきった能には無意味なことだった。 皆が、俺を呼んでるはずなのに。 土籠、ヤコ、少年、ヤシロ… 「あーまーね!おはよう!起きたんだね!」 わざわざ俺の目の前に現れたソイツの顔を見た途端、俺の視界は晴れ晴れとしてハッキリとその顔を見ることが出来た。 鏡に写したような俺とそっくりの顔に、右頬の「封」の文字。 間違いない。 コイツは、俺の弟の司だ。 「つ…かさ…」 「俺たちよくやくずっと一緒にいられるよ!あまね!!」 この弟は、何を言っているのだろう。 ずっと一緒?そんなふざけたことを言わないで欲しい。 俺には皆が…あれ?皆…俺のには大事な人達がいたはずだ…でも…おかしい…それが誰だったかなんて、俺は思い出せずにいた。 司の名前しか呼べない。 司が視界にいないと、世界が霞んで見える。 俺は一体どうなってしまってんだろう。 分からない。 誰か、教えて。 「あまねは俺のことだけ見てればいいんだよ」 司の言葉に、俺は静かに頷いた。 [newpage] 薄暗い部屋の中で、背中に腕が回されて、そのまま仰向けに倒されて、フローリングにぎゅうぎゅうと押し付けられた。 「あまね…可愛い…」 俺を見下す弟、司。 高揚とした目で毎日毎日、あの手この手を使って俺を傷付ける。 全身痛いし弟にこんなことをされるなんて屈辱でしかないけど、俺は兄だから、我慢しなくちゃならない。 兄とは我慢するものだと、親には繰り返しよく言われた。 「俺に馬乗りにされて、好き勝手されて、傷だらけ…ね、あまねお兄ちゃん」 俺の顔に近づけられた弟の顔は、酷く似ているが、俺には到底、こんな表情は出来ないと思った。 狂ってる。 誰がどう見ても、コイツは普通じゃない。 俺があまりに無口で無反応だからか、司は一回俺の上から降りて、俺の右腕をわざと痛くなるように持ち上げた。 「っ…」 「あまね〜、この包帯さ、誰にやってもらったの?」 右腕には、今日放課後いつも通りシツコイ土籠先生が俺に処置してくれた包帯が巻かれている。 土籠先生は俺の担任だ。 いつも傷だらけの俺を気にかけてくれるし、傷の処置も毎回してくれる。 「誰の仕業だ」って聞いてくる以外は、良い先生だ。 「…自分でやったよ」 「ウソだ。 だってあまねそんなに器用じゃないでしょ。 左腕だって痛い状態で一人で出来るわけないよ」 全てお見通しだと言わんばかりの目に、若干怯んでしまう。 土籠先生にこの傷の原因を言わないように、司にも、この処置をしてくれる人の名前は出さなかった。 どんなに強く言われようと、どんなに嫌な暴力振るわれても。 だってどっちも大切な人だから。 「ホントだよ。 俺が自分でやったの。 司シツコイ」 「あまねは絶対にこれだけは口を割らないよね」 やれやれとため息を吐く弟に、やれやれと言いたいのはこっちだと言いたくなる。 初めてこの弟に暴力を振るわれたのは、中学校にあがってからだった。 友達もほどほどに出来て、その友達と遊んでから家に帰ると、急に頭に強い衝撃が走った。 次に目を覚ましたら、幼い頃よく一緒に遊んだ子供部屋で手が拘束されて、上には弟。 その時司に言われた言葉は今でも鮮明に思い出せる。 「あまね、好きだよ」 なんの曇もない笑顔でそう言った瞬間、司は俺を沢山殴った。 泣いても止めてもらえなくて、寧ろエスカレートしていって、司は満足そうに笑って、俺の頬に唇を落とした。 「あまね可愛い…大好き…」 ああ、もう手遅れなんだなと、その時俺は痛感した。 司が俺に暴力を振るうのはいつの間にか日課になっていたし、俺もそれに慣れてしまっていた。 はじめの方に出ていた涙ももう出なくなった。 たまに嫌になって一人で泣く時はあるけど、それでも結構収まった方だ。 司は俺に自分で付けた傷がないと不安になるらしいから、俺はもうしょうがないものだと割り切っている。 抵抗するなんて考えはなかった。 だって可愛い弟だから。 そうやって、俺も少しずつ、司に落ちていく。 [newpage] 日もどっぷり落ちて、夜の子供部屋。 学習机と布団以外、特に目立つものは置かれていない質素な部屋で、俺は今日も弟に痛めつけられてる。 腕は後ろに回されて手首は縄で絞められ、そのまま弟に押し倒されるのだ。 凄く痛い。 今日は何をされるのだろうとぼーっと思っていたら、弟の司は俺の首に手を巻き付けてきて、俺の首を少し締める。 首をこうやって締められるのは初めてじゃないし、少し苦しいだけだからいつもより楽だった。 司が不気味な笑を浮かべるまでは。 「あまねダイスキ、ずっと一緒にいようね」 今までやんわりと締めていたはずの司の手に、急にぐっと力が入って、俺の気管は狭くなっていく。 あまりに急な出来事で理解出来ないまま、気管を締め上げられてる感覚に涙が出てきた。 「つ…かさ…!」 声を出したくても上手く声が出ない。 司はずっと笑ったままだ。 苦しい。 息が吸えない。 吐けない。 体全体が痺れて…俺、ここで死んじゃうのかな…? そんなことが脳裏に過ぎった瞬間、俺は自分の首を締めてる司の腕をどうにかどかそうと、全身を大きく波打って抵抗した。 嫌だ、死にたくない、死にたくない、死にたくない!! 「わぅ」 俺が抵抗すれば、司は案外すぐにバランスを崩して俺の上から落ちた。 そしてその後に気付く。 抵抗してしまった。 司に抗ってしまった。 他にもっと痛くて苦しいことをさせられてしまう… 司が体勢を整えて、俺の上には乗らないまま、片方の手が伸びてくる。 また、首を締められるかもしれない…今度こそ死ぬまで…… そんな一人恐怖に陥っていた俺に、司は首を締めることなく頬を優しく撫でた。 「今日は凄い元気だねあまね、死ぬかと思った…?俺があまねを殺すわけないじゃん。 ダイスキだよあまね、かわいい」 俺の目にはまだ涙が溜まっていて、司の細かい表情はよく分からなかった。 司に暴力を受け、最後には必ず「ダイスキ」と「かわいい」を言われ始めたのはいつだったろう。 なんで俺のことが好きなら、こんな痛いことをするの。 なんでぼろぼろになった俺を見て「スキ」だなんて言うの。 そんなことを一人ぐちぐち思いながら、久々に優しく触れられた司の手に甘えるように、少し頬ずりした。 [newpage] 「っつかさ…!やだっ、バレちゃうよ…っ!」 「だいじょーぶだいじょーぶ、あまねが声出さなきゃいいんだよ、ね?」 日が落ちて、親も寝静まる時間、司はたまに俺の上に馬乗りになってくることがある。 まあその場合大体はあれだ、セクハラみたいなもの。 「ひっ…つかさ…!」 「いーの?声出して、バレちゃうよ?」 俺の首筋を舐めてきてわざとそんなことを言う司に殺意が芽生える。 俺が抵抗しなければ司の手はどんどん俺の服の中に入っていくし… 「っん…」 「あはっ、ほーんとあまねって、お腹弱いよねぇ」 パジャマの下に手を這って、直に司が俺の腹部を掴んでくる。 自分でも認めているけど、俺は本当にお腹が弱い。 触られると力が抜けてしまう。 ふにゃふにゃになってしまうのだ。 「んっ…つかさぁ…やだぁ…」 生理的な涙が出てきて、視界がじわじわと歪んでも、司の俺を触る手は止まらない。 お腹からどんどん、司の手が胸の方に這い上がってくる。 「っつかさ…ほんとに…だめ…」 「あまね泣いてるの?かーわい…」 まさぐる手の動きを止めて、俺の頭を撫でる司。 これだ、この、司が俺を撫でる手つきがいつも優しくて、つい司に心を許してしまう。 俺を撫でている腕とは反対の手で、司はまた俺のお腹を掴んだ。 「ひゃ…」 「あまね、キモチイ?」 司の顔が俺の顔の真横まできて、耳元でそんなことを言われてしまえば、俺に抵抗する気力なんてなくなるくらい、コイツももう分かっているくせに。 「うん、キモチイ…」 俺がそう言えば、司はにこりと笑って、俺の口にキスを落とした。 [newpage] ライブが終わって楽屋に戻り、一息つく。 汗でビショビショだから、タオルで汗を拭き取って、手を扇子代わりにパタパタさせながら、俺はソファに腰を落とした。 着替えなきゃいけないけど、疲れてもう少しこのままでいたい気持ちもある。 そのまま何分かぼーっとしてたら、廊下からバタバタと走る足音が、どんどん近付いてくるように聞こえた。 少し気になって、顔を廊下側に向ける。 そしたらその瞬間、扉が弾けるように開いて、弟である司が、楽屋に飛び込んできた。 「つかさ?!」 「あまねおつかれさま!!」 ソファに座っている俺の上に被さるようにして、司が抱き着いてきた。 汗が冷えてきていたから、司に抱き着かれると暖かさが丁度良くなる。 それは別にいいんだ。 ただ… 「ひっ…つかさ!首舐めちゃだめ…!」 「え〜なんで?気持ちいいでしょ?」 この弟、俺によくセクハラしてくるのだ。 結構過激なところまで。 隙あらばやらしく腰を撫でてるし、耳に息を吹きかけたり…お前はおじさんか!! とにかく、今日はされるがままになる訳にはいかない。 兄の威厳というものも見せたい。 「つかさ…ホントにだめ…!!」 「いーじゃんいーじゃん、こーんなヤラシイカッコしてんだから」 「だからぁ!!…っぅ」 太ももを掴まれて、上にグイッと上げられる。 これ以上はダメだ。 この弟を止めるために何か、何か口実…なんでも良い… 「あっ…んぅ?!」 丁度いい口実を見つけて、それを言おうとしたら司に唇を奪われて何も言えなくなってしまった。 深い方だし…司はそのまま俺の口内を蹂躙していく。 舌に舌を絡めたり、上顎を舐めたり…そろそろ呼吸が苦しくなったところで、司が顔を離したから、俺はさっき言おうとした言葉を言った。 「つかさぁ…ドアあいてるから…ダメぇ…」 言ってから気付く。 言うタイミングを完璧に間違えたって。 もっと最初のうちに言わなきゃいけないことだったって。 司はにんまりと笑って、楽屋のドアを閉めに行く。 運良く人は通っていなかったらしい。 いや、この場合は運悪く、なのかも。 司はドアを閉めてまたこっちに振り向いて、俺に近付いてくる。 俺は捕まってたまるかって感じで、逃げたいんだけど体が上手く動かなくて、じりじりと楽屋の隅まで追いやられてしまった。 まって、これかなりヤバイ状況なんじゃ…… 「あまねは俺と二人きりでしたかったんだね、気付けなくてごめんね?」 至極楽しそうな笑顔でそう言って、俺に覆いかぶさってきた弟に、俺はもう抵抗出来なかった。 [newpage] 学校の居残り課題がようやく終わって帰ってきた。 この時間は家に誰もいないことの方が多いから特に何も言わずに家に上がる。 カバンを二階にある弟と共有の子供部屋に置こうと階段をゆっくりと上がっていく。 子供部屋には多分、もう帰ってる弟がいるはずだ。 階段を上がりきって子供部屋のドアの前まで行くと、弟、司の啜り泣く声が聞こえてきた。 いつも笑顔を絶やさない司が、泣いている。 きっと俺に隠したいんだろう、だからいつも俺には笑顔しか見せないんだろう。 俺はそう察して、ドアに耳を当てて司が何を言っているのか、耳をすませた。 「あ…ね……キ…」 よく聞こえなくて、更にドアに耳を押し付ける。 ドアに潰れた耳が少し痛いが、今の俺には、啜り泣く司が何を言っているのかを知る方が優先順位が上だった。 「あまね…スキ…」 はっきり聞こえた声は、俺を困惑されるのには充分なものであった。 俺の弟は、司は、いつも素直だ。 バカ正直というか、思ったこと、興味をもったことを素直に言うし、やってしまう。 そんな司が、ここまで押し込めている感情があることに、俺は驚いた。 そしてもう一つ、俺もまた、司のことが好きだということ。 兄弟愛とかじゃなくて、もっと特別な意味で。 司がこうも押し込めている感情を、俺はどうやって解放させてやれば良いんだろうと、出来損ないの俺の脳は考える。 考えたところで、答えは一つしか出せなかった。 俺はドアを開ける。 司は驚いたようで、こっちを見ている目は見開いて涙で濡れていた。 俺は馬鹿だった。 「俺も…スキだよ、つかさのこと…」 緊張して振り絞った言葉。 司は、どんな顔をしてくれるんだろう。 司の顔をチラリと見たら、司の顔は、絶望に濡れていた。 「あまね…あまね…俺もね、スキだよ、あまねのこと…!あまね…!」 先ほどと比べて明らかに司の汗の量が増えている。 絶望の表情の上に幸せな顔を浮かべた司は、俺の名前を何度も呼んで、なんども「スキ」だと言っている。 「つかさ…?」 「あまね、スキ。 あまね、スキ。 あまね、スキ…!!」 ついに司の肌がボロりと滴った所で、俺は事の重大さに気が付いた。 この世には、「アイス」と呼ばれる種と、「ジュース」と呼ばれる種がいる。 「アイス」と「ジュース」が心を通じ合わせたら、「アイス」は溶けて死んでしまうと。 司は、自分が「アイス」だと、俺が「ジュース」だと知っていたんだ。 だからずっと押し込めていたんだ。 なのに、俺は自分のことも、司のことも何も分かっていなかった。 やってしまったことはもうやり直せない。 だけど、最後に一度だけでも、そう思って司に駆け寄った。 「スキになって、ごめんね…あまね…」 司の体を抱きしめようとしたら、その瞬間、司の体は液状化して、子供部屋の床に水溜りが出来た。 司の姿は、俺の腕の中にあるわけがない。 「つかさ…?」 俺は馬鹿だった。 * 「その子のことは守るんだ?俺のことは殺したくせに」 「久しぶり、俺のこと…おぼえてるよね?」 「あまね」.

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地縛少年花子くんのアニメ化希望の声!あらすじや登場人物が面白い?

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遠くで俺を呼ぶ声が聞こえる。 この声は…土籠?ヤコ?少年?ヤシロ…?聞こえる声がグチャグチャに混ざっていって、もはや俺の名前を聞き取ることは出来なかった。 俺は今一体どんな状況なのだろうか。 皆が俺の名前を呼ぶってことは、緊急事態なのかな? 考えれば考えるほど溶けそうな脳ミソを使って現状を確認しようと、掠める視界を晴らすために手で目を擦ろうとしたら、俺の腕が拘束されていることに気が付いた。 両腕は後ろの木の棒に括りつけられていて、完全に使えない状態だ。 白状代も周りに見当たらない。 俺は今、本当に、どういう状況なのだろうか。 「あまねっ」 ふと横から聞こえた声に、俺の身体も思考も全て停止した。 横に振り返ってはいけない。 顔を見たら、もう二度と元に戻れない気がして。 皆の声がする方に集中する。 けれども、もう何も考えられないほど溶けきった能には無意味なことだった。 皆が、俺を呼んでるはずなのに。 土籠、ヤコ、少年、ヤシロ… 「あーまーね!おはよう!起きたんだね!」 わざわざ俺の目の前に現れたソイツの顔を見た途端、俺の視界は晴れ晴れとしてハッキリとその顔を見ることが出来た。 鏡に写したような俺とそっくりの顔に、右頬の「封」の文字。 間違いない。 コイツは、俺の弟の司だ。 「つ…かさ…」 「俺たちよくやくずっと一緒にいられるよ!あまね!!」 この弟は、何を言っているのだろう。 ずっと一緒?そんなふざけたことを言わないで欲しい。 俺には皆が…あれ?皆…俺のには大事な人達がいたはずだ…でも…おかしい…それが誰だったかなんて、俺は思い出せずにいた。 司の名前しか呼べない。 司が視界にいないと、世界が霞んで見える。 俺は一体どうなってしまってんだろう。 分からない。 誰か、教えて。 「あまねは俺のことだけ見てればいいんだよ」 司の言葉に、俺は静かに頷いた。 [newpage] 薄暗い部屋の中で、背中に腕が回されて、そのまま仰向けに倒されて、フローリングにぎゅうぎゅうと押し付けられた。 「あまね…可愛い…」 俺を見下す弟、司。 高揚とした目で毎日毎日、あの手この手を使って俺を傷付ける。 全身痛いし弟にこんなことをされるなんて屈辱でしかないけど、俺は兄だから、我慢しなくちゃならない。 兄とは我慢するものだと、親には繰り返しよく言われた。 「俺に馬乗りにされて、好き勝手されて、傷だらけ…ね、あまねお兄ちゃん」 俺の顔に近づけられた弟の顔は、酷く似ているが、俺には到底、こんな表情は出来ないと思った。 狂ってる。 誰がどう見ても、コイツは普通じゃない。 俺があまりに無口で無反応だからか、司は一回俺の上から降りて、俺の右腕をわざと痛くなるように持ち上げた。 「っ…」 「あまね〜、この包帯さ、誰にやってもらったの?」 右腕には、今日放課後いつも通りシツコイ土籠先生が俺に処置してくれた包帯が巻かれている。 土籠先生は俺の担任だ。 いつも傷だらけの俺を気にかけてくれるし、傷の処置も毎回してくれる。 「誰の仕業だ」って聞いてくる以外は、良い先生だ。 「…自分でやったよ」 「ウソだ。 だってあまねそんなに器用じゃないでしょ。 左腕だって痛い状態で一人で出来るわけないよ」 全てお見通しだと言わんばかりの目に、若干怯んでしまう。 土籠先生にこの傷の原因を言わないように、司にも、この処置をしてくれる人の名前は出さなかった。 どんなに強く言われようと、どんなに嫌な暴力振るわれても。 だってどっちも大切な人だから。 「ホントだよ。 俺が自分でやったの。 司シツコイ」 「あまねは絶対にこれだけは口を割らないよね」 やれやれとため息を吐く弟に、やれやれと言いたいのはこっちだと言いたくなる。 初めてこの弟に暴力を振るわれたのは、中学校にあがってからだった。 友達もほどほどに出来て、その友達と遊んでから家に帰ると、急に頭に強い衝撃が走った。 次に目を覚ましたら、幼い頃よく一緒に遊んだ子供部屋で手が拘束されて、上には弟。 その時司に言われた言葉は今でも鮮明に思い出せる。 「あまね、好きだよ」 なんの曇もない笑顔でそう言った瞬間、司は俺を沢山殴った。 泣いても止めてもらえなくて、寧ろエスカレートしていって、司は満足そうに笑って、俺の頬に唇を落とした。 「あまね可愛い…大好き…」 ああ、もう手遅れなんだなと、その時俺は痛感した。 司が俺に暴力を振るうのはいつの間にか日課になっていたし、俺もそれに慣れてしまっていた。 はじめの方に出ていた涙ももう出なくなった。 たまに嫌になって一人で泣く時はあるけど、それでも結構収まった方だ。 司は俺に自分で付けた傷がないと不安になるらしいから、俺はもうしょうがないものだと割り切っている。 抵抗するなんて考えはなかった。 だって可愛い弟だから。 そうやって、俺も少しずつ、司に落ちていく。 [newpage] 日もどっぷり落ちて、夜の子供部屋。 学習机と布団以外、特に目立つものは置かれていない質素な部屋で、俺は今日も弟に痛めつけられてる。 腕は後ろに回されて手首は縄で絞められ、そのまま弟に押し倒されるのだ。 凄く痛い。 今日は何をされるのだろうとぼーっと思っていたら、弟の司は俺の首に手を巻き付けてきて、俺の首を少し締める。 首をこうやって締められるのは初めてじゃないし、少し苦しいだけだからいつもより楽だった。 司が不気味な笑を浮かべるまでは。 「あまねダイスキ、ずっと一緒にいようね」 今までやんわりと締めていたはずの司の手に、急にぐっと力が入って、俺の気管は狭くなっていく。 あまりに急な出来事で理解出来ないまま、気管を締め上げられてる感覚に涙が出てきた。 「つ…かさ…!」 声を出したくても上手く声が出ない。 司はずっと笑ったままだ。 苦しい。 息が吸えない。 吐けない。 体全体が痺れて…俺、ここで死んじゃうのかな…? そんなことが脳裏に過ぎった瞬間、俺は自分の首を締めてる司の腕をどうにかどかそうと、全身を大きく波打って抵抗した。 嫌だ、死にたくない、死にたくない、死にたくない!! 「わぅ」 俺が抵抗すれば、司は案外すぐにバランスを崩して俺の上から落ちた。 そしてその後に気付く。 抵抗してしまった。 司に抗ってしまった。 他にもっと痛くて苦しいことをさせられてしまう… 司が体勢を整えて、俺の上には乗らないまま、片方の手が伸びてくる。 また、首を締められるかもしれない…今度こそ死ぬまで…… そんな一人恐怖に陥っていた俺に、司は首を締めることなく頬を優しく撫でた。 「今日は凄い元気だねあまね、死ぬかと思った…?俺があまねを殺すわけないじゃん。 ダイスキだよあまね、かわいい」 俺の目にはまだ涙が溜まっていて、司の細かい表情はよく分からなかった。 司に暴力を受け、最後には必ず「ダイスキ」と「かわいい」を言われ始めたのはいつだったろう。 なんで俺のことが好きなら、こんな痛いことをするの。 なんでぼろぼろになった俺を見て「スキ」だなんて言うの。 そんなことを一人ぐちぐち思いながら、久々に優しく触れられた司の手に甘えるように、少し頬ずりした。 [newpage] 「っつかさ…!やだっ、バレちゃうよ…っ!」 「だいじょーぶだいじょーぶ、あまねが声出さなきゃいいんだよ、ね?」 日が落ちて、親も寝静まる時間、司はたまに俺の上に馬乗りになってくることがある。 まあその場合大体はあれだ、セクハラみたいなもの。 「ひっ…つかさ…!」 「いーの?声出して、バレちゃうよ?」 俺の首筋を舐めてきてわざとそんなことを言う司に殺意が芽生える。 俺が抵抗しなければ司の手はどんどん俺の服の中に入っていくし… 「っん…」 「あはっ、ほーんとあまねって、お腹弱いよねぇ」 パジャマの下に手を這って、直に司が俺の腹部を掴んでくる。 自分でも認めているけど、俺は本当にお腹が弱い。 触られると力が抜けてしまう。 ふにゃふにゃになってしまうのだ。 「んっ…つかさぁ…やだぁ…」 生理的な涙が出てきて、視界がじわじわと歪んでも、司の俺を触る手は止まらない。 お腹からどんどん、司の手が胸の方に這い上がってくる。 「っつかさ…ほんとに…だめ…」 「あまね泣いてるの?かーわい…」 まさぐる手の動きを止めて、俺の頭を撫でる司。 これだ、この、司が俺を撫でる手つきがいつも優しくて、つい司に心を許してしまう。 俺を撫でている腕とは反対の手で、司はまた俺のお腹を掴んだ。 「ひゃ…」 「あまね、キモチイ?」 司の顔が俺の顔の真横まできて、耳元でそんなことを言われてしまえば、俺に抵抗する気力なんてなくなるくらい、コイツももう分かっているくせに。 「うん、キモチイ…」 俺がそう言えば、司はにこりと笑って、俺の口にキスを落とした。 [newpage] ライブが終わって楽屋に戻り、一息つく。 汗でビショビショだから、タオルで汗を拭き取って、手を扇子代わりにパタパタさせながら、俺はソファに腰を落とした。 着替えなきゃいけないけど、疲れてもう少しこのままでいたい気持ちもある。 そのまま何分かぼーっとしてたら、廊下からバタバタと走る足音が、どんどん近付いてくるように聞こえた。 少し気になって、顔を廊下側に向ける。 そしたらその瞬間、扉が弾けるように開いて、弟である司が、楽屋に飛び込んできた。 「つかさ?!」 「あまねおつかれさま!!」 ソファに座っている俺の上に被さるようにして、司が抱き着いてきた。 汗が冷えてきていたから、司に抱き着かれると暖かさが丁度良くなる。 それは別にいいんだ。 ただ… 「ひっ…つかさ!首舐めちゃだめ…!」 「え〜なんで?気持ちいいでしょ?」 この弟、俺によくセクハラしてくるのだ。 結構過激なところまで。 隙あらばやらしく腰を撫でてるし、耳に息を吹きかけたり…お前はおじさんか!! とにかく、今日はされるがままになる訳にはいかない。 兄の威厳というものも見せたい。 「つかさ…ホントにだめ…!!」 「いーじゃんいーじゃん、こーんなヤラシイカッコしてんだから」 「だからぁ!!…っぅ」 太ももを掴まれて、上にグイッと上げられる。 これ以上はダメだ。 この弟を止めるために何か、何か口実…なんでも良い… 「あっ…んぅ?!」 丁度いい口実を見つけて、それを言おうとしたら司に唇を奪われて何も言えなくなってしまった。 深い方だし…司はそのまま俺の口内を蹂躙していく。 舌に舌を絡めたり、上顎を舐めたり…そろそろ呼吸が苦しくなったところで、司が顔を離したから、俺はさっき言おうとした言葉を言った。 「つかさぁ…ドアあいてるから…ダメぇ…」 言ってから気付く。 言うタイミングを完璧に間違えたって。 もっと最初のうちに言わなきゃいけないことだったって。 司はにんまりと笑って、楽屋のドアを閉めに行く。 運良く人は通っていなかったらしい。 いや、この場合は運悪く、なのかも。 司はドアを閉めてまたこっちに振り向いて、俺に近付いてくる。 俺は捕まってたまるかって感じで、逃げたいんだけど体が上手く動かなくて、じりじりと楽屋の隅まで追いやられてしまった。 まって、これかなりヤバイ状況なんじゃ…… 「あまねは俺と二人きりでしたかったんだね、気付けなくてごめんね?」 至極楽しそうな笑顔でそう言って、俺に覆いかぶさってきた弟に、俺はもう抵抗出来なかった。 [newpage] 学校の居残り課題がようやく終わって帰ってきた。 この時間は家に誰もいないことの方が多いから特に何も言わずに家に上がる。 カバンを二階にある弟と共有の子供部屋に置こうと階段をゆっくりと上がっていく。 子供部屋には多分、もう帰ってる弟がいるはずだ。 階段を上がりきって子供部屋のドアの前まで行くと、弟、司の啜り泣く声が聞こえてきた。 いつも笑顔を絶やさない司が、泣いている。 きっと俺に隠したいんだろう、だからいつも俺には笑顔しか見せないんだろう。 俺はそう察して、ドアに耳を当てて司が何を言っているのか、耳をすませた。 「あ…ね……キ…」 よく聞こえなくて、更にドアに耳を押し付ける。 ドアに潰れた耳が少し痛いが、今の俺には、啜り泣く司が何を言っているのかを知る方が優先順位が上だった。 「あまね…スキ…」 はっきり聞こえた声は、俺を困惑されるのには充分なものであった。 俺の弟は、司は、いつも素直だ。 バカ正直というか、思ったこと、興味をもったことを素直に言うし、やってしまう。 そんな司が、ここまで押し込めている感情があることに、俺は驚いた。 そしてもう一つ、俺もまた、司のことが好きだということ。 兄弟愛とかじゃなくて、もっと特別な意味で。 司がこうも押し込めている感情を、俺はどうやって解放させてやれば良いんだろうと、出来損ないの俺の脳は考える。 考えたところで、答えは一つしか出せなかった。 俺はドアを開ける。 司は驚いたようで、こっちを見ている目は見開いて涙で濡れていた。 俺は馬鹿だった。 「俺も…スキだよ、つかさのこと…」 緊張して振り絞った言葉。 司は、どんな顔をしてくれるんだろう。 司の顔をチラリと見たら、司の顔は、絶望に濡れていた。 「あまね…あまね…俺もね、スキだよ、あまねのこと…!あまね…!」 先ほどと比べて明らかに司の汗の量が増えている。 絶望の表情の上に幸せな顔を浮かべた司は、俺の名前を何度も呼んで、なんども「スキ」だと言っている。 「つかさ…?」 「あまね、スキ。 あまね、スキ。 あまね、スキ…!!」 ついに司の肌がボロりと滴った所で、俺は事の重大さに気が付いた。 この世には、「アイス」と呼ばれる種と、「ジュース」と呼ばれる種がいる。 「アイス」と「ジュース」が心を通じ合わせたら、「アイス」は溶けて死んでしまうと。 司は、自分が「アイス」だと、俺が「ジュース」だと知っていたんだ。 だからずっと押し込めていたんだ。 なのに、俺は自分のことも、司のことも何も分かっていなかった。 やってしまったことはもうやり直せない。 だけど、最後に一度だけでも、そう思って司に駆け寄った。 「スキになって、ごめんね…あまね…」 司の体を抱きしめようとしたら、その瞬間、司の体は液状化して、子供部屋の床に水溜りが出来た。 司の姿は、俺の腕の中にあるわけがない。 「つかさ…?」 俺は馬鹿だった。 * 「その子のことは守るんだ?俺のことは殺したくせに」 「久しぶり、俺のこと…おぼえてるよね?」 「あまね」.

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地縛少年花子くん【最新第61話】宿泊学習その2 ネタバレと感想!

自縛少年花子くんティックトック

花子くん・・・梶裕貴、山下大輔、悠木碧 寧々・・・ 悠木碧、内田真礼、 光 ・・・ 斎藤壮馬、岡本信彦 輝 ・・・ 梶裕貴、斉藤壮馬 土籠先生・・・諏訪部順一、遊佐浩二 など色々意見がありました。 誰になるか気になりますね~ どこまで? まだ原作が連載中なので、アニメがどこまでなのか気になりますね。 黒執事のようにオリジナルになって完結する可能性も? まだ漫画では、花子くんが双子の弟つかさを殺した理由もまだわかってません。 寧々の寿命があと1年もないことが判明。 何が原因で命を落とすことになるのかも気になりますね? まだ完結には時間がかかりそう! アニメも2クールの可能性も! 無理やり1クールで完結しないで欲しいですね。 恋愛要素はある? 恋愛といえば、寧々と花子くんの恋の行方が気になりますね。 最初は寧々に対して下僕のような扱いをしたり、からかったりしてました。 でも、なんだかんだ言いながら寧々のことを守ってます。 そして寧々も花子くんのことを意識してますね。 花子くんは元々、人間ではなく怪異。 寧々の寿命は1年もないことは決まっている。 二人が結ばれることはあるのでしょうか?.

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