キメラ ウイルス。 新型コロナは何が“新型”? 既存のコロナウイルスや肺炎との違いとは

愛媛県における地域流行から検出された新規キメラウイルスGII.P21

キメラ ウイルス

近年、ウイルスの遺伝情報を解読して、その核酸配列情報を元に、試験管内でウイルス遺伝子を大量に人工合成できるようになりました。 リバースジェネティクスが可能になると、ウイルスが何故病気を起こすのか、ウイルスの増殖を止めるにはウイルスの何処を狙って薬を作れば良いのかを、ウイルス遺伝子を直接操作して研究できるようになり、ワクチンや治療薬の開発を一気に加速することができます。 C型肝炎ウイルスやインフルエンザウイルスの治療薬は、このようにして作り出されたのです。 乳幼児に重篤な下痢症を引き起こすロタウイルスは、安全なワクチンや治療薬の開発のため、リバースジェネティクスの構築が切望されてきました。 しかし、ロタウイルスのリバースジェネティクス構築は困難を極めました。 なぜなら、ロタウイルスはウイルス内部に11本もの遺伝子断片を持つため、人工合成した11種類の遺伝子すべてを、同時に一つの細胞のなかに導入しなければならなかったからです。 2017年に、増殖能力が飛びぬけて良いサルロタウイルスを用いて、最初のリバースジェネティクスが開発されました。 ヒトロタウイルスは、病原性、レセプターおよび増殖して細胞から出てきた新生ウイルスに感染力を持たせるための前処理条件などが、サルや他の動物ロタウイルスとは異なります。 ヒトロタウイルスを正しく理解し、ヒトロタウイルスのワクチンや治療薬を開発するためには、動物のロタウイルスではなく、ヒトロタウイルスのリバースジェネティクスが必須なのです。 本研究グループは2018年に、動物ロタウイルスの11本の遺伝子のうち、2種類の遺伝子(非構造タンパク質NSP2とNSP5)を他の9本の遺伝子の3倍量にして細胞に導入することで、従来の~1,000倍も効率良く、ロタウイルスを人工合成できることを見出しました(Komoto et al. J Virol 92:e00588-18)。 そこで、本研究で、ヒトロタウイルスの11本の遺伝子のうち、NSP2とNSP5遺伝子を他の9本の遺伝子の3倍量にして、さらに、ロタウイルス胃腸炎患者便中のウイルスを効率良く分離する技術(高濃度のトリプシン添加と回転培養)を利用することで、ヒトロタウイルスを人工合成することに成功しました(図1)。 本研究成果の意義 図2:(上)ヒトロタウイルスの遺伝子を取り出して、弱毒化したり、感染力を低くする変異を加える。 または、新規流行株と同じ遺伝子に改変する。 リバースジェネティクス(RGS)でヒトロタウイルス変異株を造り、ワクチンや抗ウイルス薬の開発に利用する。 (下)サルロタウイルスにヒトロタウイルスの編集した遺伝子を入れ、RGSでヒトロタウイルスの遺伝子を持つサル・ヒトのキメラウイルスを造り、その性状の変化をサルの細胞などで研究する。 変化が観察されたら、サル・ヒトのキメラウイルスをヒトに効率良く感染可能なキメラウイルスに作り直し、ヒト細胞で検証する。 本研究は、藤田医科大学の河本聡志講師、福田佐織研究補助員、谷口孝喜名誉教授、村田貴之教授らの研究グループが、北里大学北里生命科学研究所の小山ちとせ研究員、片山和彦教授との共同で行ったものです。 本研究成果は、2019年2月6日(米国東部時間)発行の「Journal of Virology 電子版」に掲載されました。 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 研究開発課題名:下痢症ウイルスの病原性発現機構の解明及び新規治療薬・ワクチン等の開発に向けた研究 研究開発代表者:染谷 雄一 研究開発期間:平成29年4月~平成32年3月 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 研究開発課題名:培養細胞感染系が確立されていない病原体の新たな感染複製系等の開発とそれを用いた診断・治療・予防法の開発に向けた研究 研究開発代表者:石井 孝司 研究開発期間:平成28年4月~平成31年3月 また本研究は、日本学術振興会科学研究費からの支援も受けています。 kitasato-u.

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「キメラウイルス」に関するQ&A

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双子はしばしば、分ち難い絆で結ばれる。 しかしテイラーの場合、彼女と二卵性双生児のきょうだいは、ひとりの人間になっているのだ。 非常に珍しい遺伝学的事象が発生し、テイラーさんは子宮のなかで、二卵性双生児のきょうだいと融合した。 そしてその結果、彼女は2セットのDNAを持つことになった。 自分自身ときょうだいのDNAを1セットずつだ。 この珍しい現象は「キメラ」と呼ばれている。 テイラーがこの事実を知ったのは、健康上の問題で病院を訪れたときのことだった。 『People』誌のインタビューのなかでテイラーは、彼女の母は身ごもったときに超音波検査を受けておらず、子宮内で双子が融合してしまっていることを知らなかったと。 テイラーは2017年、Instagramへの投稿で、自身が「キメラ」であることを。 医療系トーク番組「 The Doctors」にも。 彼女は自身のブログでこう。 「私の体は双子です。 私は、子宮のなかできょうだいと融合した二卵性双生児の片方であり、そのきょうだいの遺伝子構造を体のなかに持っているのです」 ニューヨーク大学ランゴンヘルス医療センターの臨床遺伝科で責任者をつとめるはBuzzFeed Newsの取材に対して、「簡単な言葉で説明すると、キメラとは、2つの異なる個体のゲノムを持った個体のことです。 つまり、キメラの体のなかには、異なった細胞や組織が入り交じって存在しているのです」と語った。 キメラという遺伝子現象は、二卵性双生児が子宮内で融合するときに起こる。 「一卵性双生児が融合する場合は、キメラではありません。 一卵性双生児は同じゲノムを持っているからです」とパパス博士は説明する。 二卵性双生児の場合、2個の精子が2個の卵子を受精させて、2個の受精卵が生まれ、その後、それぞれが分裂して2つの胚へと成長する。 テイラーのようなキメラの場合、これら2個の胚が融合してひとかたまりになり、1人の人間になる。 「これが起こるのは、胚期の早い段階です。 通常は、胚期の最初の数日、つまり、それぞれの胚が2個の細胞からなるかたまりのときです」とパパス博士は言う。 この融合が胚発生の後期に起こると、双子の片方がもう片方を「吸収」することがある。 このような場合、後者は奇形腫の原因になるという。 奇形腫は腫瘍の一種で、良性の場合と悪性の場合がある。 「この融合がごく初期に起こると、場合により、それぞれのゲノムの貢献度はほぼ半々になります。 遅ければ遅いほど、もう片方の胎児のDNAは少なくなります」と、パパス博士は言う。 融合の発生時期が早ければ早いほど、胎児の生存率も高くなるという。 キメラ現象が起こることはめったにない。 「正確な数字はわかりませんが、おそらく確率は10万分の1以下ではないでしょうか」とパパス博士は言う。 以前のテイラーは、この色のちがいを、ただの変わったアザだと思っていた。 ところがそれは、実は彼女がキメラであることを示す身体症状のひとつだった。 「2つのゲノム的背景を持っている場合、皮膚の色合いが場所によって異なる人もいます。 その異なった色合いが、もう一方の個体を起源としているからです」とパパス博士は言う。 テイラーの体には、ほかにもいくつか変わった点が見られる。 「右側とくらべると、体の左側のほうが全体的に少し大きいんです。 口のなかにも、左側に1本、癒合歯(結合した2本の歯)が生えています」と彼女は書いている。 キメラのなかでも、テイラーのケースはかなり特殊だ。 というのも、キメラのほとんどには、これほど明らかな身体的特徴の相違は見られないからだ。 「私には免疫系と血流が2つあるそうです」と彼女は書いている。 そのせいで、これまでにテイラーはさまざまな健康問題に悩まされてきた。 そもそも彼女が病院に行き、自分がキメラであることを知ったのものそのためだった。 「私の体は、双子のきょうだいのDNAや細胞を異物として認識し、免疫系を傷つけています。 そのせいで私は、不幸にも自己免疫疾患などの健康上の問題で苦しんでいます」と彼女は書いている。 体のなかに別のDNAがあるということは、一部の細胞が若干異なったタンパク質を生成するということであり、そしてさらには、体がそれを異物として認識し、免疫系の問題を引き起こすおそれがあるということを意味する、とパパス博士は言う。 さらにテイラーは、さまざまな食べものや薬、金属、昆虫などに対してアレルギーなどの過敏症も抱えているという。 キメラに起因するさらに深刻な健康問題が生じるのは、融合する2つの胚の性別が異なる場合だ。 そうなるとその人は、XX型とXY型の染色体をどちらも持つことになってしまう。 「このようなケースでは、生殖腺(卵巣・精巣)の結合により、外性器異常(性器の性別があいまいな状態)が生じます。 生殖腺にがんができるリスクも高まります」とパパス博士は言う。 キメラは理論上、2つの異なった免疫系や血液型を持つことが可能であり、それが親子鑑定や法医鑑定に問題を引き起こすことにもなりかねない、とパパス博士は言う。 実際これまでにも、キメラの親と実の子どもが親子鑑定を行った結果、共通するDNAがわずかしかないことが明らかになったケースが(それはまるで、その子のおばやおじであるかのような割合だった)。 その子どもが、生まれることのなかったおじやおば(親の二卵性双生児のきょうだい)からDNAを受け継いでいたからだ。 なお、DNA検査の結果は、サンプルがとられた場所(たとえば血液や髪の毛、唾液、爪など)によって変わることがある。 それぞれの組織や器官が、異なった遺伝子型を持つ細胞で構成されている可能性があるためだ。 検査はとても複雑で、費用も相当かかるため、自分がキメラであることを知らないでいる人もいるかもしれない。

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キメラ

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愛媛県における地域流行から検出された新規キメラウイルスGII. P21-GII. 1について IASR Vol. 38 p. 9-10: 2017年 はじめに 感染性胃腸炎の主な原因であるノロウイルス(NoV)は, 遺伝子変異やゲノム組換えによる新しい変異株の出現を繰り返し, 地域流行や世界的な流行を起こしている。 特に, 近年, ORF1とORF2のjunction領域で遺伝子組換えを起こした変異株の流行が報告されている。 愛媛県では, 2000年以降報告数の少なかったNoV GII. 1について分子疫学的解析を行い, 新しいキメラウイルスを同定したので報告する。 愛媛県におけるGII. 1の流行 2008年10月~2009年9月に, 感染症発生動向調査の小児科定点医療機関等で採取された感染性胃腸炎患者糞便337検体から199例(59. 1%)のウイルスが検出され, NoVが102例で最も多く, そのうちGIIが96例で大部分を占めていた。 GIIは, 2008年11月~2009年2月に多く検出され, この間に検出されたウイルスの69. 6%(102例中71例)を占めていた。 この71例の遺伝子型は, GII. 4が31例(43. 7%), GII. 1が24例(33. 8%), GII. 3が7例(9. 9%), GII. 6が5例(7. 0%), GII. 14が2例(2. 8%), 型別未実施が2例(2. 8%)であった。 GII. 4は1~2月に集中して検出され, 一方, GII. 1は12月が最も多く, 2月まで検出された。 GII. GII. 1流行株の分子疫学解析 GII. 9~100%で近縁であった。 1のキメラウイルスであることが明らかにされた。 さらに, これらの株についてポリメラーゼ領域の遺伝子解析を行うと, 塩基配列の相同性は99. 次世代シークエンサーを用いたGII. 5%)を示し, 遺伝子型GII. P21と最も近縁であったが, ORF2とORF3は塩基配列の相同性がそれぞれ69. 1%, 65. 3%と低かった。 P1-GII. P21-GII. 1と考えられた()。 おわりに 愛媛県において地域流行したNoV GIIは, ORF1のポリメラーゼ領域がGII. 1に型別されたことから, ORF1とORF2のjunction領域で遺伝子組換えを起こしたウイルスであることが示唆された。 このうち1株について, NGSによる全長解析を行った結果, ORF1がGII. 21, ORF2およびORF3がGII. 1で, 新しいGII. P21-GII. 1のキメラウイルスであることが明らかにされ, このキメラウイルスの出現が地域流行に関与していたと考えられた。 謝辞:AMED「下痢症ウイルスの分子疫学と感染制御に関する研究」班, 愛媛県の保健所・医療機関, 国立感染症研究所ウイルス第二部, 同感染症疫学センターの関係者の皆様に深謝いたします。

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